S&S事業本部テクノロジーパートナー開発で勤務する崎戸梨恵は、小学2年から高校まで佐賀県の高飛び込みのクラブに所属していたそうです。この11年間の経験が彼女のなかにリーダー気質を育みます。大学では画像認識を学び、カメラや画像に関わる仕事を希望して進路を決定。常に「楽しく仕事がしたい」と思いながらも、入社してからの5年間にはつらい時期も。その山あり谷ありの道のりを笑顔で語ってくれました。
商品が生まれる過程をじっくり体験
入社後のキャリアを教えてください。
割と短期間で部署や業務を変えてきました。2016年に入社して最初に配属されたのは、先行開発部門。カメラに搭載する予定のアプリや技術を先に検証するシステムテストを担当しました。チームには、ソフト系だけではなく、電気や機構を担当する方もいて、いろいろと専門的な話が聞けましたし、一緒に展示会に臨んだりもして、1年目にしてすごくいい経験ができました。
2年後には商品開発部門へ異動しています。
1年目に先行開発で扱っていた技術を商品に搭載するというタイミングで、開発者も一緒に異動したんです。
動画から自動車がどこにあるのかをまず検知して、その形と色をコンピュータで認識するという技術だったんですけど、商品化する際に、見た目から使い方まで、お客様から意見を伺い要件整理しながら詰めていきました。いまは、既存の商品をバージョンアップする開発がおもで、まったく新しい商品を立ち上げる機会は少ないので、振り返ればこれも大切な経験ですね。
このころ、初の海外出張に行かれたそうですね。
オーストラリアへ1週間行きました。現地のお客様がメンバーに向けて、i-PROの商品のデモを行うということで、その技術調整とサポートが目的です。実際に現場での状況を見てみると、想定していたのとはちょっと違っていました。机の上でやっている分には最適化されているように思えるんですけど、現場に入ると手順が冗長に思えたり、文字が小さすぎることに気づいたり。設置の担当者や販売会社のメンバーとも、調整方法などについて「こうした方がいいんじゃないか」なんてアドバイスをもらったりして。いろんな点で勉強になりましたね。
入社して4年間で、技術が生まれるところも見て、技術が商品になるところも見て、商品を使うお客さんの顔も見ることができました。私の今後のキャリアにおいても、本当に貴重な経験だったと思います。
ICVプロジェクトで訪れた転機とは
2020年に配属されたICVプロジェクトチームは、どのような部署なんですか?
北米の警察が使用するウェラブルカメラを開発するチームです。前年に要件定義で一部サポートをしたことがきっかけで、部署異動して本格的にプロジェクトに関わることになりました。
要件整理をする際には汎用的に考えていたんですけど、使用するお客様は警察官と決まっているので、かなり要件が特化しているんですね。身体に装着するカメラならではの要件があって、ボタンの押しやすさとか、揺れにどう対処するかとか、装着している警察官がお手洗いに行ったときにはどうするかとか。新規商品でわからないことも多くて大変でした。
このとき、初めてソフトウェアリーダーを務めました。ご苦労もあったのでは?
ICVに異動して最初の数ヶ月間は本当につらかったです。自分の知識が本当にゼロで、なにもわからなくて。調べられるところは調べようとしたんですが、ウェアブルカメラは一般的な商品ではないので調べようにも調べようがなかったりして。最終的には人に聞かないとわからないんですけど、周りのみんなはすごく忙しそうで、だんだん気後れするようになって。新しい技術を勉強して早く理解しなくてはという焦りもありましたし、同僚もおらず基本的に1人で考えなくてはいけないので、それも苦しかった。最終的に上司に相談したら、上司の方で円滑に仕事が回るように調整してくれて、それからはほかの人に積極的に聞けるようになりました。
振り返ってみると本当に大変だったんですけど、プロジェクトをやり遂げたことで実績になりましたし、「BWC4000」というウェアラブルカメラの最新の商品に関わることもできた。この経験は自分のなかでも自信になっています。
テレビの報道番組などでアメリカの警察官が映ったとき、「BWC4000」を探したりしませんか?
探します(笑)。それはi-PROの社員はみんなそうだと思うんですけど、カメラで撮影した映像が流れたときには、「うちのかな」って思わず見ますね。「これはうちのじゃないな」っていうのは、すぐわかるんです。そのなかでも、「この映像はうちの商品のものだ!」とわかるときもあります。
品質の高さこそi-PROの個性
現在所属しているテクノロジーパートナー開発は、今後、i-PROのAIカメラを発展させるうえで、非常に重要な使命を担っています。
この部署は、AIカメラに入れるアプリを開発してくれるベンダーさんを開拓してサポートすることがミッションです。メンバーはみんなフットワークが軽くて、新しい技術を見つけたらどんどん提案するように言っていますし、ベンダーさんにもどんどん足を運ぼうという感じです。いまは新型コロナ禍で訪問はできないので、ビデオ会議などでベンダーさんとお話ししています。
以前は、ニッチなニーズに対しては採算が取れないのでお断りしていたんですけど、ベンダーさんにアプリをつくってもらえれば、そういうニッチな仕事も拾っていけるのがうれしい。海外のベンダーさんが開発したアプリはいっぱいありますが、日本のアプリはまだまだ少ないので、もっと数を増やしてアプリのストアをつくれればいいねって、部署内で話しています。なにかを「やりたい」と思ったときに、アプリを探して「これとこれを組み合わせればできる」というイメージで。それが可能になるくらいアプリのバリエーションを広げたいですね。
AIカメラはi-PROが他社よりも先行している商品だと思います。アプリがAIカメラの命運を握っているとも言えるので、大胆にアプリの可能性を広げていくことでAIカメラを後押ししたい。
AIカメラも今後競争が激化すると思われますが、i-PROの優位性はどこにあるのでしょう?
私はやっぱり品質の良さだと思っていて。画質なんかは他社と比較検証してみても、間違いなく勝っていると思いますし。日本では、まず品質が良くないと土俵に上がれません。ただ、海外では品質は多少落ちてもいいという考え方もあるように思います。品質よりも価格や設置のしやすさの優先順位が高い。それでも品質はi-PROの個性だし強みだと思うので、どんどんアピールして海外でも認めてもらいたい。
アピールという点では、AIカメラのアプリについても同様で、今後はベンダーさんがi-PROのカメラを見つけてくれることや、お客様がi-PROのカメラとベンダーさんを見つけてくれることが大事で、そのためにはプロモーションに近いこともやっていかなくてはいけないと考えています。
最後に、今後のキャリアをどのように描いているか教えてください。
入社年度から「お客様の声を聞き、それを商品に反映する技術者になりたい」という目標を掲げてきました。いまは技術者になるのか、お客様と技術者の橋渡しをするSEの道を進むのか決めかねていて。
でも、もしSEになったとしても、技術者としての一面は完全には捨てたくない。技術のことでお客様と対等にしゃべれるレベルは維持したいし、お客様の要望に対してこういう技術がありますと提案できるようなSEでありたい。
いまの業務では、いろんなベンダーさんの技術を勉強したり、グローバルな考え方に触れたり、ニッチな発想がもつ可能性について考えたりしていますが、そういったことも糧にしながら、今後のキャリアを考えるヒントにしたいと思っています。