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社会の安心安全に繋げる

i-PROが見据えた、グローバル市場の展望と次なる展開

2020年 12月 23日

執行役員 海外サーベイランス事業部長 櫃石 紀男

政情の変化や昨今の新型コロナウイルス騒動など、社会不安が広がると共に、その重要性が増すインテリジェント監視の世界。市場の現状と、i-PROが考える海外戦略とは何か。パナソニックの海外販社経験が長く、i-PROセキュリティ事業部門で海外営業を担当し、グローバル市場での成長に取り組む執行役員の櫃石紀男に聞きました。


監視社会の中国、プライバシー重視のフランス……地域で異なるインテリジェント監視のニーズ

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Q.櫃石さんのこれまでのご経歴と、i-PROにおける現在の役割を教えてください。

パナソニックに入社後、法人営業を担当していましたが、海外で働きたいと希望を出し、31歳で異動してからはイギリス・欧州、シンガポールと海外畑を渡り歩いてきました。2018年に帰国後、パナソニックのセキュリティ事業部門における営業責任者を経て、i-PRO設立時にそのまま当社に移籍しました。現在は、米国以外の海外市場の責任者として、営業はもちろん、現地の声を取り入れた商品企画や中国にある工場へとの調整など、全体を指揮しています。

Q.インテリジェント監視の世界市場について、地域ごとにどのような特長がありますか?

市場全体の見取り図でいうと、需要の半分が中国、次いで¼がアメリカ、残りをヨーロッパや東南アジアなど他の地域が分け合う形となっています。メーカー別シェアで見ると、とりわけここ10年における中国メーカーの成長が著しく、シェア1位と2位はいずれも中国メーカーが独占している構図です。

地域ごとの歴史や文化によって、監視カメラの設置状況は大きく異なります。例えば中国は、政府の政策により街中の多くの場所に監視カメラが設置されています。ヨーロッパでは、かつて国内でのテロに悩まされていたイギリスの場合、国民一人当たりの監視カメラ設置台数が多い一方で、プライバシーを気にするフランスでは監視カメラへの規制があります。日本はプライバシーへの配慮と安全性の両立という意味ではバランスが取れていて、安定した需要があります。

Q.各国におけるニーズも様々だと思いますが、総じてi-PROの製品はどう評価されていますか?

故障が少なく、安定性が高いメンテナンスいらずのカメラとして高い評価をいただいています。最近の監視カメラは、映像認識機能など色々なアプリケーションに組み込まれていますが、設置環境によっては暑さや寒さで停止してしまうリスクもありますし、屋外の風雨にさらされる環境などで故障リスクも高くなり、安定稼働できない恐れがあります。

その点、i-PROのインテリジェンス監視カメラシステムは、設計段階から様々な設置環境や条件を想定し、実機テストもしっかりおこなった上で製品化しているので、そう簡単には故障しませんし、システム暴走も起きません。さらに、パナソニックの頃から60年にわたり継承されてきた画作りのノウハウがあります。同じ光学センサーやレンズを使っていても、カメラで撮影される映像のクオリティは他社のものとは全然違います。特に色の再現性にはこだわりを持って勝負しており、一度使っていただけたら間違いなく満足していただける自信があります。


現地の満足度を高めるローカライゼーション

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Q.パナソニックから独立し、今後はメーカーとしてさまざまなソリューションプロバイダーと協業する形になりました。これまでと比較して、商品開発や売り方などに変化はありますか?

商品開発の面では、海外のユーザーや販売会社の意見を徹底的に聞いて、海外市場向けの商品開発をすべく動いています。これまでは、日本におけるニーズをベースに、海外向けに味付けする考え方でした。例えば、欧米人とアジア人とでは色彩感覚が違うため、映像の好みも異なりますし、求められるポイントも異なります。そこで、現地の人の意見や感性を信じて調整する方がいいという発想で、ローカライズされた商品に変えていこうとしています。実はもう既に、新しい取り組みがスタートしているんです。

Q. どんな取り組みなのでしょうか?

今年7月に、AIプロセッサーを搭載したネットワークカメラを発売しました。このカメラには、撮影された映像をディープラーニング技術で分析するアプリケーションを複数搭載可能で、従来のネットワークカメラでは難しかった高負荷のAI処理を、カメラ内部で行えるという特長があります。この映像を分析するアプリケーションを、欧州を中心とした地場のソフトウェア会社に作ってもらおうと取り組んでおり、既にイタリアのパートナーが25本のアプリケーションを開発してくれました。

パナソニックの事業部だった当時は、カメラからアプリケーションまで、全てを自社内で作っていましたが、日本で作るとどうしても日本人が好む仕様になってしまい、海外のお客様の満足度を100%高められないことをもどかしく思っていました。ならばむしろ、映像の色味など細かい味付けのところは現地企業の力をお借りして、もっと現地にローカライズされた製品を提供していこうというのが私たちの狙いです。現地のソフトウェア会社にとっても新しいビジネスチャンスになり、互いにWin-Winの関係になれます。


これからの監視カメラに求められるものは、異変予知力とメーカーとしての信頼感

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Q.今後、i-PROに求められているものはどんなことだとお考えですか?

これからの監視カメラシステムには、犯罪や事件を未然に防ぐ「予知力」のアップがますます求められていくでしょう。今までは警察官が街頭に立って目視で不審者を見つけていたのが、今後は監視カメラが不審な人物を自動検知して、事件が起こる前にアラートを出すという社会に向かうはずです。その際に他社との差別化という意味でも大きなポイントとなるのは、AI技術の活用です。パナソニックの一事業であった当時から培ってきた高い技術力をi-PROで継承しながら、自社開発や現地企業との協業など、i-PROとしてできる限りの備えをして社会の要望に応えていければと思っています。

もう1つ忘れてはならない基本的なことがあります。それは、私たちはプライバシーに関わる大事なデータを扱っているということです。使い方によっては大きなリスクをはらむセキュリティデータを、どうフェアに扱うか。メーカーとしての信頼感も、今後ますます問われるようになるでしょう。信頼で選ばれる企業であり続けるために、日本でのシェアNo.1をキープしつつ、グローバル市場におけるプレゼンスも高め、より多くのお客さまにi-PROの高品質な監視カメラシステムを使っていただきたいと思っています。

Q. 最後に、櫃石さんの今後の展望について、聞かせてください。

これはパナソニックにいた頃から変わりませんが、幅広く奥深い知恵と技術を持つ同僚エンジニアたちと一緒に社会のニーズを形にし、新商品として世に出していける醍醐味は、メーカーでないと味わえない仕事のやりがいです。特に、海外でのニーズも踏まえながら自ら意見したものが商品化され、お客様に感謝頂けた時には、何ものにも代えがたい喜びがあり、それが私の原動力にもなっています。インテリジェント監視分野への世界的なニーズの高まりに応えて、良いものづくりを続け、社会に貢献していきたいと思っています。

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インタビュー:佐藤 渉

写真:前田 耕司

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櫃石 紀男(ひついし のりお)

京都大学法学部を卒業し、松下電器産業に入社。法人営業、累計12年間の海外販売会社出向などを担当したのち、パナソニックセキュリティ事業部門の営業責任者に着任。2019年10月、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ設立に伴い、アメリカ以外の海外市場の全体統括を担う。

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