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医療の進化を支える終わりなき挑戦

2022年 10月 25日

執行役員 メディカルビジョン事業部長 細矢 雅彦

i-PROのメディカルビジョン事業部は、内視鏡や顕微鏡などで使用されるカメラモジュールを開発し、世界中の医療機器メーカーに供給しています。人の生命を左右する重要な局面で医師の「目」となるカメラは、医療現場におけるさまざまなニーズを掬い取りながら、これまで進化を遂げてきました。その歩みと今後の飛躍のために求められることを、メディカルビジョン事業部を率いる細矢雅彦に聞きました。

 

これまでにない技術で社会に貢献したい

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Q. 東北大学をご卒業されていますが、ご出身も東北ですか?

出身は北海道なんです。大学に入学して仙台へ移り、就職して横浜に移り、ここ10年ほどは福岡と縁があるということで、徐々に南下してきました。

Q. 大学を卒業後、メーカーへの就職を選んだ動機はなんだったのでしょう?

ものづくりを通して社会に貢献したいという想いがありましたし、それもただの「もの」ではなくて、世の中にない新しいものをつくりたいと思っていました。メディカルビジョンの事業はまさにこの通りですし、いま、こうやって関わることができて本当にラッキーだなと思います。

Q.入社後はシステムエンジニアとして活躍するわけですが、そのころも医療との関連した仕事をされていますね。

1994年から5年間、病院のシステム開発を担当しました。そのとき、医療用語を僕なりに相当勉強しました。用語がわからないと看護師や医師の方ともやりとりができなくて、システムが組めないんです。用語だけではなく、看護師や医師のみなさんが現場でなにをやっているかも勉強しました。そのときの経験が現在のメディカルビジョンの仕事でもすごく生きています。
その後はメディカル分野、セキュリティカメラも含めて、複数の事業を並行して担当しました。

Q.医療と監視では求められるものがまったく異なると思いますが、戸惑うことはありませんでしたか?

基本的に映像技術なので、共通した部分がたくさんあります。感度や解像度といった要素は共通して求められることです。一方で、監視は人物や車のナンバープレート等を撮影し医療は内臓など人体内を撮影するといったように、被写体が違うので、求められる画づくりは異なります。


医療現場で培ったi-PROカメラの強み

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Q. メディカル分野で求められる画づくりとは具体的にどのようなものでしょう?

セキュリティカメラと大きく違うのは、メディカル分野では「色の再現性」がより重視される点ですね。医師は血管や内臓の状態を色で判断するからです。

そのため、メディカルでは分光カメラモジュールが採用されます。これは光をプリズムによってRGB(赤・緑・青)という光の三原色に分ける仕組みです。セキュリティカメラであれば、搭載するセンサーは1つですが、分光カメラの場合は、RGBそれぞれをキャッチするために、3つのセンサーを搭載しています。また、目には見えない近赤外光に対応する場合には、1つセンサーが増えます。近赤外光は、可視光であるRGBから独立させて制御できるのでノイズにならないし、画像処理も容易になるんです。

i-PROはこの分光カメラで使用するプリズムの内製化に踏み切りました。いままでは外から調達していたので、ある程度のロットがないとお客様のご要望に応じたカメラは作れなかった。しかし、内製化することで、たとえ小ロットであってもお客様のご要望に応じた波長特性を実現できるようになります。これは非常に大きなメリットです。多種多様なニーズに、スピード感をもって対応するということに、i-PROは会社をあげて取り組んでいますが、メディカルビジョンでもそれを推進していきます。

Q. メディカルビジョン事業部が提供するデバイス/システムとして、分光カメラモジュールと並んで細径カメラモジュールが挙げられていますが、これはどのような特徴を備えているのでしょう?

セキュリティカメラと医療用カメラの違いの一つにカメラヘッドのサイズが挙げられますが、細径カメラモジュールは1ミリを切るくらいのサイズです。

分光カメラもそうなんですが、我々のカメラの役割とは、見えないものを可視化することなんですよ。人体には普通のカメラでは到達できない場所がたくさんあるんですが、この細径カメラモジュールを使えば、そこにも届いて「見える化」できます。

また、医療機器に搭載したカメラを小型化すればするほど、医療処置機器用のスペースが増えます。これはどういうことかというと、人体で見えなかった箇所が「見える」というだけではなくて、「見ながら処置ができる」ということです。つまり、カメラの小型化が、医療の質の向上に直結するんです。

Q. 処置の回数が減れば、患者の方のQOLも維持できますね。ほかにメディカル分野で重視される技術はありますか?

医療機器には高温滅菌処理(オートクレーブ)が必要です。この処理を繰り返すとプリズムとセンサーの接着部分が劣化し、画質が劣化することがわかっていました。そこで、使用する接着剤を複数調合したり、硬化方法を研究したりすることで、この課題を克服しました。このこともi-PROの医療用カメラが医療現場から支持され、大きなシェアを獲得する礎となっています。


世界の医療を変える新しいテクノロジー

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Q. 医療用カメラのテクノロジートレンドについて教えてください。

我々のカメラの役目は見えないものを可視化することだと言いましたが、薬剤を使って人体内を可視化するICG蛍光造影法という技術が注目されています。体内に薬剤を注入して特殊な光を当てると薬剤が微弱な光を放つんです。これによって、血液の流れがわかったり、がん細胞に付着してその位置がわかったりと、さまざまな活用法が期待できます。

その微弱な光を捉えることができるカメラが今後求められます。その光が微弱であればあるほど、それを捉えることに特化したカメラが医療現場では必要となりますし、我々はそんな要望に応えていきたいと思っています。

Q. 昨今、AI技術が脚光を浴びていますが、医療の現場でAIが活用される余地はあるのでしょうか?

監視の世界だと人間ではなくてAIが「見る」時代になりつつありますが、医療ではあくまでも「見る」のは現場の医師です。その点はやはり違いますね。
しかし、医療の世界でAIを活用しようという動きも、なくはないです。実際に開発が進んでいるものとして、医師の経験をAIに学習させて、手術などの際に活用するというものがあります。ベテランで優秀なお医者さんは、どこに血管があるとか、たとえば、どこに尿管があるとか、微妙な体内の起伏や長年の経験でわかるんですよ。それを生かして、経験の浅い医師がオペをする際に、AIが血管などの位置を明示するんです。
ただ、これは商品としてリリースしようとするには、かなり敷居が高いと思います。「ここは血管なので注意してください」というふうにアラートとして出すならいいのですが、「ここは血管です」となると診断になってしまう。「この内視鏡は血管の位置を特定します」なんて謳うと、治験データをしっかりそろえなければいけません。それだけで何年もかかってしまいます。大学などで研究は進んでいますが、実用化はまだ先のようです。

Q. i-PROの医療用カメラは世界市場において、どのようなポジションにいるのでしょう?

内視鏡や顕微鏡用カメラモジュールとしては、グローバル市場でもトップクラスのシェアをとっていますし、依然成長を続けています。

プリズムとセンサを張り合わせた分光カメラモジュールは、世界でも技術的競争力がある製品で、分光によって色の再現性を高めたり、近赤外光で薬剤も可視化したりできるという点で、非常に高く評価されていますし、今後もますます伸びていくとマーケットリサーチでも報告されています。

Q. 世界のさまざまな医療機器メーカーがi-PROのカメラモジュールを採用しているんですね。

我々の顧客のおよそ6割は実はアメリカの企業なんです。約2割がヨーロッパ、1割が日本、残り1割が中国です。我々は彼らにカメラを供給して、彼らがそのカメラを内視鏡に組み込み世界に広める、そういう構図になっています。


未来のニーズを先取りし叶えていく

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Q. 今後に向けた課題があれば、教えてください。

医療のことを我々はもっともっと知らなくてはいけません。医療現場でなにが求められているのかということが、まだカメラという視点でしか見えていないと思うんですよね。医療機器はどんどん進化してます。我々は医療機器メーカーとディスカッションを繰り返して、その進化に対応したカメラをつくり、ノウハウを蓄積してきました。

でも、それだけではダメで、医療機器メーカーとだけではなく、現場の医師と話をしなくてはならない。彼らがなにを望んでいるのかが重要なんです。そして彼らが3年後、5年後になにを望んでいるのかをつかむ必要がある。それをつねにウォッチしながら、さまざまな準備をし、医療メーカーに商品化を提案する。そんな流れをつくりたいのです。

Q. 製品のラインナップについてはいかがですか?

医療現場では、画角にしても出力インターフェイスにしても、さまざまなご要望があります。お客様が自由にそれを選べるように設計プロセスを見直して、モジュール化を進めていきます。もちろん、医療機器メーカーとのディスカッションを通じた商品開発も重要ですが、加えて、あるニーズを抱えていてそれにミートするようなカメラを探している方々にも応えられるような商品ラインナップを用意したいと思います。現在は、個々のメーカーに提案活動をしているのですが、将来的にはウエブサイトに商品ラインナップを掲載して、お客様がそこから自由に選べるようにしたい。

プリズムの内製化とモジュール化設計、この2つでお客様の多種多様な要望に応えていきたいと思います。

Q. 最後に今後の抱負をお願いします。

i-PROの「i」には、「イメージング」「インテリジェンス」「インテグレーション」という意味が込められています。これらの意味を体現するようなカメラをつくっていきたい。メディカル、セキュリティと使われる領域が異なっても、大元を辿るとどんな製品も「i」に繋がっている。そんなものづくりをやっていきたいですね。

僕にとって一番大きい「i」はイメージングです。メディカル分野のイメージングは医療の質の向上や安全性と密接に結びついています。医療は今後もどんどん進化していきます。だから、我々も進化を続けていかなくてはなりません。メディカルにおけるイメージングの追求に終わりはないのです。

 

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インタビュー:佐藤 渉

写真:前田 耕司

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細矢 雅彦(ほそや まさひこ)

北海道出身。東北大学工学部卒業後、松下通信工業株式会社(現パナソニック)に入社。開発研究所にてPBXのソフトウェア開発に携わった後、病院情報システムのシステムエンジニアとして活躍。虹彩認証カメラ事業や監視カメラ事業、テレビ会議システム事業の責任者、パナソニックi-PROセンシングソリューション執行役員・インダストリアル&メディカルビジョン(IMV)事業部 事業部長を経て、2022年4月よりi-PRO株式会社 バイスプレジデント及びメディカルビジョン事業部ヘッドを務める。

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