i-PROのセンシング技術は、セキュリティカメラの分野に加え、メディカル分野でも力を発揮しています。MV(Medical Visionの略)は、硬性内視鏡、手術用顕微鏡メーカー様向けにカメラモジュールを開発、供給することで、先端医療の発展に寄与してきました。これまでの実績を振り返るとともに、その根本を支える3つのキーワードを解き明かします。
たとえば、お客様の要望に合わせて、分光特性や光路長を変更したり、筐体やI/F基板の有無などの製品構成を変更したり、映像処理機能を追加したりなどのカスタマイズを行います。
また、i-PROの三板式カメラの大きな特長の1つとして、3つの撮像素子の「画素ずらし」による高解像度化技術があります。半画素ずらした位置に高精度に調整し、接着固定する必要があり、赤血球よりも細かい1μm以下の精度が要求されます。
一方で、硬性内視鏡用途ではカメラヘッドの高温高圧蒸気による滅菌処理を行うため、通常は繰り返しの滅菌処理による温度サイクルで撮像素子の接着位置がずれ、解像度低下を起こしてしまいます。MVでは、繰り返し行う滅菌処理による解像度低下を防ぎたいというお客様の要望に応えるため、接着方法を独自に研究するなどして、高度な耐熱信頼性を実現しています。
このように、MVは、臨床の現場が抱えている問題やご要望を理解したうえで、その解決に向けて柔軟な姿勢で取り組んでいきます。
2016年には世界初となる4K対応4板カメラモジュールを開発。これは可視光(RGB)と赤外光(IR)を1台のカメラで同時に撮影する技術で、日本、アメリカ、ヨーロッパにおいて特許を取得しました。また、RGBとIR映像の独立出力やマルチ画面など多彩な出力に対応していることも、高く評価されています。
続いて2018年には、イメージセンサーを先端に搭載した血管内視鏡カテーテルを発売。これも世界初の試みで、大阪大学との共同研究により生まれたプロダクトです。従来の医療機器の常識にとらわれない大胆なアイディアを、MVの技術力によって実現することができました。
高画質・高感度そして鮮やかな色再現性を追究し、さらに医療現場で必要とされる高い操作性や映像調整のしやすさを実現するためには、時には前例や常識を乗り越えた大胆な発想が必要であると考えています。
昨今、主流となりつつある医療技術にICG蛍光法による術中ナビゲーションがあります。これは、ICG(インドシアニングリーン)という試薬を患者様の体内に注入し、励起光を照射して発せられる蛍光をカメラでとらえることにより、肉眼では見えない癌や血流、リンパ節を手術中にリアルタイムで可視化するものです。これにより、従来よりも安全で精緻な手術が可能となり、患者様の負荷を減らすことができます。
i-PROは早期からこのICG蛍光法で使用されるNIR(近赤外)対応カメラの開発に取り組んできました。その過程で医療現場の生の声をヒアリングすることにより、従来使用されてきたカメラの課題を見つめ直し、必要とされている機能やシステムの実現に努めました
コンパクトなサイズで、高感度、高い色再現性、高フレームレートの映像を担保し、自然光や室内照明などの影響を受けることなく、1台で可視光・NIR光同時撮像が可能なカメラを目指し開発を進めた末、2017年に実用化したのが、i-PROがこれまでに培ったプリズム分光技術・接着技術を活かした四板式NIRカメラです。
i‐PROのカメラは、可視光映像/NIR映像独立信号制御で可視光出力に影響を与えず、NIR光出力の感度調整が可能となっており、また、カメラ1台で可視光とNIR光を同一の光軸で見ることができるため、NIR画像を可視画像に重畳して確認したいという、医療現場の要望を満たすこともできました。
このように、MVは、常に医療現場の声に耳を傾けながら、誠意をもって問題解決に取り組んでいます。そして、結果的に患者様の命と健康を守ることが、MVの使命です。
「柔軟」「大胆」「誠実」は、i-PROがコーポレート・アイデンティティとして掲げている3つのキーワードです。「いのち」に直結する医療現場にさらに貢献していけるよう、MVの根幹にあるスピリッツである「大胆」「柔軟」「誠実」を胸に挑戦を続けていきます。