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経験していないことこそ技術者としての「伸びしろ」

2022年 10月 3日

セキュリティ&セーフティーカメラプロダクト ハウジングモジュール開発 小柳 陽平

新卒で電機メーカーに就職し、そこから約12年間、カメラの機構設計に携わってきた小柳陽平。現在はi-PROのコーポレートテクノロジー機構プラクティスで、監視カメラの設計に腕を振るっています。同じ「カメラ」でも、それまでとはまったく異なる機能を求められる監視カメラと向き合いながら、彼はなにを思い、どこを目指しているのでしょう。入社後1年が過ぎようとしているいま、率直に語ってくれました。


「カメラ」つながりでi-PROに入社

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大学は工学部に入学し、大学院にも進まれたんですね。

高校生のころからものづくりに関心があって、自動車会社に行くつもりで、大学で機械工学を勉強したんですけど、縁があって電機メーカーに就職しました。
そこからi-PROに転職した理由はいくつかあります。僕は佐賀出身で、実家に戻らなければならない事情があったのが一つ。あと、40歳を前にして転職するならこのタイミングしかないかなと思って。でも、僕の職歴を活かせる会社が九州にはなかなかなくて。困っているときに「カメラの設計をやったことのある人」っていうドンピシャな求人が来て、i-PROに決めました。

九州で暮らすのは、高校卒業以来ということですが、久しぶりの九州はどうですか?

最初は本当になにもないと思ったんですけどね(笑)。でも、高校のころとは違って、クルマで移動するとね、意外に九州にも、これまで行ったことがなかった、いいところがたくさんあって。以前は神奈川に住んでいたんですけど、そこに比べると近所の公園でもすごくデカいんですよね。スケールが違うというか。僕には子供が2人いるんですけど、すごく喜んでいます。

前の会社で手がけていたカメラはどんな用途のものだったんですか?

最初はテレビ局で使うムービーのカメラですね。肩に担ぐデカいやつ。その後はコンシューマー向けのデジタル一眼カメラも設計しました。専門は機構の外装とか内部構造とかそういったところです。
i-PROでは監視カメラの機構設計をやっています。これまでやってきたカメラと形と大きさは違うにしても、やることはすごく似てますね。
もちろん、違う部分もありますよ。たとえばテレビ局で使うカメラも信頼性とか堅牢性についてはうるさく言われますが、監視カメラの場合は、24時間ずっと稼働するわけじゃないですか。テレビ用よりも一段高いレベルの信頼性が求められるんです。あと、監視カメラって、躯体がこう回ったりとか上下に動いたりしますよね。そういうメカトロニクスの部分はこれまで全然やってなくて、今後勉強が必要かなって思っているところです。

優位性を支えるのは「誠実」さ

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i-PROはメーカーに徹すると宣言して、生産方式のモジュール化を進めていますが、小柳さんから見てi-PROの優位性ってどこにあるとお考えですか?

それについては僕も考えていたんですよ。監視カメラっていろんな会社がつくっているし、市場の取り合いなんです。要はそこでどう差異化するか。たとえば、ほかの会社を圧倒する画期的な技術を開発できれば、そこで差異化できるけど、それはモジュール化を進めるi-PROのやり方ではない。
i-PROの機構で重視されるのは信頼性とか小型化とかですが、それに加えて僕が入社して先輩から特に大事にしろと言われたのは設置性です。いかに施工業者が素早く設置して工事を終わらせるかが重要なんだよって言われて、確かにそうだなって。簡単にできることではないけど、他社にはマネできない施工性を追い求めていけば、市場で差異化できるんじゃないかと。
実際に、設置性を高めるために、天井と本体をつなぐ作業補助ワイヤを付けた監視カメラがあります。こうすれば、設置業者の手がフリーになって作業がしやすい。そのカメラを設置する様子を営業担当の人が動画に撮って施工しやすさをアピールしていますが、こういうことの積み重ねが大事なんですよね。

現在はどんなプロジェクトに関わっているんですか?

3.1倍ズームの次世代PTZカメラです。いまはプリプロといってマスプロ(量産)の一歩手前の段階。ほぼ量産形でQA(審査部門)で審査を行っています。審査の項目は本当に細かいですね。審査に進む前には審査に耐えうるセットになっているか、設計担当内でも評価を行います。評価のプログラムの一覧があって、それを一つ一つ潰していく感じです。たとえば、雨が降ってもカメラに水が入らないかを調べる場合は、カメラを治具に固定して、規格に合った水量をバァ〜ってカメラに当てて、当て終わったらカメラを分解して水が入っていないことを確認したり。強度を測る衝撃実験であれば、錘のついた振り子をカメラにポーンて当てて、それでも大丈夫ですよねって確認します。ほかにも、プログラムを組んでもらって、1ヶ月くらい、回数で言うと何百回もカメラを動かし続けて、フレキシブル基盤の線が断線しないか確認したりもします。テストして分解して、またテストしての地道な繰り返しです。

 

製品が完成するまでには長い道のりがあるんですね。製品が市場に出た後に、トラブルが発生することもあるんですか?

市場不良はあってはならないことなんですけど、起こりえることですね。予想外の使われ方をしたり、予想外の環境に置かれたりすると、問題が起こることがあります。「予想外」なんで、審査項目にそんな使われ方や環境が含まれてないんです。
問題が起こると、そもそもなぜそんな問題が起きたのかを突き止めます。製品を分解して部品一個一個を寸法まで確認して、問題を切り分けるんです。設計が問題という場合もあれば、使った部品に不良品があった場合もあるし、組み立て方が間違っていたのかもしれない。部品を加工する段階で寸法を間違うこともあります。
僕らの製品はBtoB向けなので、お客さんに面と向かって、不良の原因を早急にきちんと説明しなきゃいけないと思うんですよね。だから問題の解析にもすごくスピード感が求められるんです。

 

現状をポジティブに捉え変化へつなげる

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i-PROはいま、いろいろな面で変わろうとしていますね。

会社を変えていこうという取り組みの一環として、試作のリードタイムを短くして製品の開発サイクルを早くしようというプロジェクトに参加しています。「こういうシステムを使ったら、いままで見積りに3日かかってたのが1日で終わって、ほかの作業を効率的に進められますよ」という感じで、提案します。
改善点は、業務においてもいくつかあって。PTZカメラのプロジェクトが特殊なのかもしれませんが、僕が感じた限りで言うと、設計の手戻りが多い。設計が終わってチェックして、評価が一発で通ればいいのですが、評価の段階でNGが出て差し戻されて、また設計をやり直さなくてはならない。この繰り返しが多い気がします。
それって、CADの段階でもっと緻密にチェックすれば防げるんじゃないかと。設計がある程度完成したらメンバーが集まって、CAD上で3Dの画面を確認するんですけど、ここで問題点がちゃんと指摘されて修正できれば、最初から完成度の高い設計図ができるわけです。そうすれば手戻りも少なくなるし、開発のスピードも間違いなくアップするはずなんですよね。現状は、CADの段階のチェックは一人の責任で行うという仕組みなので、設計の完成度が上がらないけど、ここは改善したいですね。

会社の仕組みや雰囲気については、どのように感じていますか?

設計に付帯する資料作成がすごく多いとは感じます。申請用とか会議用とか。きっと、仕事を資料としてしっかり後世に残していこうという意図があるんだと思います。でも、設計にもっと時間を割きたいので、資料作成は減らしていけるといいですね。
会社の雰囲気は、オープンでフラット。会社が変わろうとしている時期だからこそ、僕みたいな外から来た人の意見をどんどん取り入れていこうと上司も考えているみたいです。問題を感じたら自由に書き込めるようなファイルを置いてるんですけど、僕らみたいな中途で入ってきた人だけじゃなくて元からいた人も含めて、みんなが課題だと思ったことを書き込むわけです。もうブワ〜って感じで長いリストができています(笑)。
いま問題がいっぱいあるからこそ、一個一個改善してみんなが仕事しやすい環境に変えるんだって、会社として本気で考えていると現場にいても感じますし、そこもすごくいいなって思いますね。

 

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次に担当するプロジェクトはもう決まっているんですか?

次世代モデルで全く新しいチャレンジをする予定です!僕は、いままで経験してこなかった技術の分野を勉強したいって思いが強いんですが、経験ない技術にチャレンジすることそのものが自分の勉強になるんだろうなと思っています。
技術の部分以外でも、自分には経験が足りていない部分があると感じます。監視カメラにどういったものが求められているのか、まだわかっていないところがあって。もっとお客さんの声を聞いていったら、「こういうソリューションがあるんじゃないの」というアイディアも出てくると思うんですよね。本当は、僕も積極的にお客さんの声を取りに行かなきゃいけない。まだその機会はないんですけど、いまやっているPTZカメラが出たら、それをきっかけにお客さんの声を聞く機会もあると思います。
PTZカメラが出て、街中で見かけたら、本当にうれしいでしょうね。設計のときは時間に追われて大変ですけど、もともと、ものづくりが好きなので、部品が到着して組み立てて、思い通りのかたちになって、そして、その製品が世に出たときには、大きな達成感があります。今後、未経験の技術を学んで、メカトロニクスの部分とかも担当していくようになると、ものづくりがもっと楽しくなると思うし、その延長線上で「こんな製品どうですか」という感じで提案までもっていけるようになれたらいいなと思います。

技術者としての伸びしろはまだまだあるという感じですね。

i-PROという会社もそうですよね。いまの会社にはこんな問題があるっていうことを社内のみんなと話すとき、「i-PROはこれができていないっていうことは、これがi-PROの"伸びしろ"だね」って言うんです。そういうポジティブな発想っていいですよね。

 


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小柳 陽平(こやなぎ・ようへい)

佐賀県神埼市出身。幼少のころより自動車に興味があり、大学では機械工学、大学院ではシステム統合工学を専攻する。卒業後は大手電機メーカーに就職し、最初の4年間は、放送局用の業務カメラの機構設計を担当。その後、デジタル一眼カメラの機構設計におよそ8年間携わった。2021年7月、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ(当時)に入社。現在取り組んでいる次世代PTZカメラは2022年中の発売が予定されている。趣味は写真撮影で、幼稚園児の長男と長女の写真を撮りためる日々。

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