中尾 真人(なかお まさと)

i-am i-PRO

社会の安心安全に繋げる

信頼の技術と半歩先行くスピードで、社会の安心・安全に寄与する

2020年 10月 1日

代表取締役会長兼CEO 中尾 真人

パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社の代表取締役会長 兼 CEOである中尾真人は、経営コンサルタントから転身し、メーカーを中心に事業再建や企業変革に多く携わってきた「プロ経営者」。2019年10月にパナソニックから独立したi-PROが新たな門出を迎える中、中尾はどんな観点から新しい組織としての強みを捉え、その手腕を発揮していくのでしょうか。


「一瞬の真実を捉える。」〜 コーポレートアイデンティティに込めた想い

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Q. i-PROのCEOを託されました。どのように受け止めていますか?

i-PROは、約60年にわたり事業を展開してきた伝統と信頼あるパナソニックから独立し、独自の価値創造のために歩み始めました。そのスタートラインから経営の舵取りをお任せいただけることになり、大変光栄に思います。社員一人ひとりの思いを集約し、お客様や古巣であるパナソニックグループ、株主や投資家の方々など当社を取り巻くステークホルダーの皆さまの共感とご支援をいただきながら、i-PROを世界に羽ばたく企業にすることが私の役目だと捉えています。

Q.外部から参画された立場から、i-PROのコアや強みはどんなところだと考えていますか?

「一瞬の真実を捉える。」ーーこれは、私が就任してすぐに、全社で議論しながら定めた当社のコーポレートアイデンティティです。このフレーズに、私たちのコアメッセージや強みが凝縮されています。

私たちがつくる監視カメラをはじめとするセキュリティシステムや医療・産業分野向けモジュールは、人々の生命や財産を大きく左右する局面で使われています。i-PROの監視カメラや(モジュールが組み込まれた)医療機器が捉えた映像が、事件・事故に向き合う警察官や、法執行の決断を下す裁判官、治療にあたる医師や検査技師など、社会の安心・安全を守るために厳しい局面で働くプロフェッショナルたちの決断を支えているのです。そう考えると、いくら製品の性能や品質を謳ったところで、彼らの判断の決定打となる“一瞬の局面”を捉えられていなければ、意味はありません。どんなに過酷な環境でもきちんと作動する信頼性と、人の目では捉えられない瞬間もしっかり捉える高い技術力が必要不可欠であり、まさにその点を強みとするのがi-PROなのです。

i-PROは、見づらい照度や距離、角度でも、確実に捉えられる「人間の五感を超える先進技術」を有しています。その強みを生かしながら、ミッションクリティカルに携わる自覚と緊張感を高く持ち、社会の安心・安全を守るプロフェッショナルたちと長期的な信頼関係を築いていく。どんな難題であろうと、逃げずに解を追い求める。その決意が私たちの事業のコアであり、コーポレートアイデンティティに込めたメッセージなのです。


メーカーに徹することで、社会の全体最適を目指す

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Q. パナソニックから事業分離し、独立することのメリットをどう考えていますか?

以前は、監視カメラの製造から付随するアプリケーション、ソリューション提案まで、全てをパナソニックグループ内で完結させる垂直統合型のスタイルでやってきました。しかし、これだけ世の中が複雑化して現場のニーズも多様化してくると、全てを1つの会社で提供することは非常に難しくなってきています。これからは、ニーズに合わせて多様な素材を柔軟に組み合わせられる水平分業型のオープンな環境に身を置くことで、よりきめ細かなニーズにリーチしたいと考えたのです。

パナソニックから独立した今、もはや私たちはソリューションプロバイダーではありません。私たちは、「人間の五感を超える先進技術」という最高の食材を提供するメーカー。それをどう料理するかは、最新の料理法を知っている方々にお任せする。そんな形で社会にとっての全体最適を目指したいと考えています。

Q. 事業分離することにより、自社の製品が活用される間口がさらに広がるということですね。そうなると、これまで競合関係にあったソリューションプロバイダーとも協業していくことになります。

その通りです。お客様への最適なソリューションを第一に考えれば、必ずしもグループ内に選択肢を絞ることがいいとは限りません。地元に密着した小規模企業や、最新の技術を使いこなすベンチャー企業にも私たちの製品を使っていただき、多様な角度から社会への貢献を考えていかなければならないと思っています。


これからのデジタル社会は、感性の競争に向かう

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Q. これまでとは違った可能性を感じます。しかし、追随する他メーカーも今後は現れてくるでしょう。どのように差別化を図っていくお考えですか?

常に早いサイクルで抜きつ抜かれつの競争が繰り返されるデジタル社会では、革新的でユニークな製品を出しても、すぐに追いつかれてしまうのが現状です。もはや製品のスペックや性能だけでは、他社との優位性を永続的に保ち続けることは難しい。それを踏まえて、i-PROは2つのポイントで差別化を図っていこうと考えています。

まずは、他社に先行される技術劣位の時間をなくし、常に他社の一歩先を行くスピード感で、お客様に最新の技術と便益をタイムリーにお届けすること。身軽な事業体となったことで、これまで以上にスピーディな意思決定や製品開発サイクルを回せるようになり、既に開発プロセスは大きく変わり始めています。Time Basedな競争で、常に世界の競合を鼻の差でリードしていくことで差別化します。

もう1つは、企業としての表現力を磨くこと。デジタル化された社会では、製品も考えも、全てが容易にコピーされ一瞬にして同じものが世界中に流布されます。言い換えれば、規模の大小関係なく、どんな者にも想いや製品を世界に届けられるチャンスがあるということです。今後は、これまでのようなスペック・品質・コストの競争ではなく、社会やユーザーの共感をどれだけ得られるかという感性の競争にシフトしていくでしょう。そんな中で、私たちi-PROはどうすれば社会の安心・安全を守るプロフェッショナルたちからの賛同と信頼を得られるのか。それを常に考えながら、コストやスペックとは違う軸で企業の表現力を高めていきたいと考えています。

Q.最後に、あらためて今後のi-PROの展望について、聞かせてください。

社会の安心・安全を守るプロフェッショナルたちと志を同じくし、その頼れる存在になることが私たちの仕事です。人の人生を左右する決断が下されるような場面で使われる重要な製品を作っているのだということに誇りを持ち、どんな難題でも逃げずに解を追い求め、お客様と長期的な信頼関係を築ける組織を作っていきたい。

そのためには、自分たちの想いや情熱をきちんと目に見える形にして、世の中に伝えていくことが必要です。私はよく「多様性からの連帯」と表現しているのですが、他人との衝突を恐れずに自分の意見を発信し、他者との違いを認めながら、共に新しいアイディアを出していく。多様性の中で、自分たち“らしさ”を表現できる。そんな企業が、これからの時代を生き残っていけるのではないでしょうか。優秀な社員たちとともに、i-PROとして、世界に羽ばたいていければと思います。

 

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インタビュー:佐藤 渉

写真:前田 耕司

執筆者:中尾 真人

中尾 真人(なかお まさと)

慶應義塾大学大学院理工学研究科工学修士取得。東京電力にエンジニアとして入社。経営の面白さに魅了され、米国で経営学を学んだ後、ボストン・コンサルティング・グループで経営コンサルタントとして機械・エネルギー業界を担当。その後、職業経営者としてミスミ、MKSパートナーズ、日本オイルポンプ代表取締役社長、ハーモニック・ドライブ・システムズ理事を経て、2019年10月パナソニックi-PROセンシングソリューションズ代表取締役会長 兼 CEOに就任。

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