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i-PROの進化とともに技術者も世界トップ・レベルに

2021年 11月 11日

執行役員 バイスプレジデント コーポレートテクノロジー ヘッド 高桑 誠

i-PROの技術全般のバックボーンとなる部門が「コーポレートテクノロジー」です。インテリジェント監視やパブリックセーフティを中心に、医療・産業用映像モジュールも含め多岐にわたるi-PRO製品全般において、先行技術の開発や最前線のプロダクト・チームによる企画開発のサポート、技術者のスキルアップなどを後押ししています。i-PROが世界水準の企業として躍進していくうえでも、大きな役割を担っているR&D(Research & Development/研究開発部門)のヘッドである高桑誠に、i-PROにおけるR&Dの重要性と今後の展望を、技術者目線で語ってもらいました。

 

“今”と“未来”の設計開発を一手に担う、先進技術の目利き役

 

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Q. 20年前(2001年)の9月11日、アメリカ同時多発テロが起こったその日に、高桑さんはアメリカにいらっしゃったそうですね。

入社以来初めてのアメリカ出張で、その日はニュージャージー州の販売会社を訪れていました。現地スタッフが、朝はなごやかに迎えてくれていたのですが、やがて空気が一変します。人が群がっていたテレビの前に行ってみると、世界貿易センタービルが崩れ落ちる瞬間が映し出されていました。それからは、すべてが混乱の極み。街中に爆弾が仕掛けられているといったデマが飛び交い人々も疑心暗鬼になって、いたる所で口論が起きていました。そのとき私は社会の「安心・安全」を守ることがいかに大切なことなのかを肌で感じたのです。

これが「どんな時にも動き続けるセキュリティカメラを作らなければいけない」と思うようになった原体験です。2001年9月11日に、我々が向き合うテーマの大きさを、心から理解することができたと言えるかもしれません。

Q. i-PROが取り組んでいる事業の重みを感じます。i-PROにおいてR&Dはどんな役割を担っているのか教えてください。

i-PROのR&Dは、プロダクト部門と密接に連携し開発を行うと同時に、未来のコアとなる技術を生み出す先行開発や、技術のマネージメントをサポートする機能を併せ持った組織です。i-PRO全体として企画と開発機能を一体化させることで市場のニーズをいち早く捉え、適切なコストでスピーディに製品化し、社会にお届けする。同時に、未来志向で常に時代の最先端を走るコア技術を生み出し続けることで、市場におけるi-PROの優位性を保つ。おもな役割はこの2つです。

Q. 具体的にはどのような開発を行っているのですか?

i-PROは、監視カメラを中心とした映像処理の技術に加え、音や距離など周囲のさまざまな情報を収集してデータ化するセンシング技術をコアとしています。それにまつわる開発はもちろん、カメラを中心とするハードウェア技術、それを機器として成り立たせるためのソフトウェア技術、さらには商品を構成する素材まで、あらゆる要素を対象にして開発に取り組んでいます。

ただし、すべてを自社開発するわけではありません。さまざまなデバイスメーカーやシステムインテグレーターと戦略的にパートナーシップを組んで一緒に作り込んだり、すでに世に出ているものから取捨選択し、最適な形でシステムに組み込むこともあります。多様なものをオープンに取り入れ使いこなす。それによって、最先端の技術をいち早く取り入れることや、システムを構成する上での仲間づくりが可能となり、お客様にとってのメリットにつながると考えています。

また、こういったことをスピードを上げて実現していくために、商品の基本構成をモジュール化し、商品のラインナップもモジュールの組み合わせで素早く展開していく。さらに、それぞれの商品もモジュールのアップデート開発を素早く行うことにより、常に最新の性能を維持し、ベストの商品をお客様にお届けしていきたいと思います。


真のプロフェッショナル技術者が新しい時代を切り拓く

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Q. セキュリティカメラ業界において、i-PROはこれまでにどのような技術革新を成し遂げてきたのでしょう?

セキュリティカメラは、i-PROの母体である松下電器産業(現パナソニック)が1957年に日本で初めて開発しました。我々はそれから60年もの間、いまでは業界標準となるような数々の技術や機能を開発し、セキュリティカメラの進化に貢献してきました。

たとえば、店舗の入口など照度差のある場所でも映像が黒つぶれせず鮮明に映せるように、撮影可能な明るさの幅を広げた「スーパーダイナミック」機能や、カメラ内のイメージセンサーを動かすことで、レンズを変えても適切なフォーカスに自動調節できる「オートバックフォーカス」などは、それまで感度や解像度しかなかった監視カメラの評価基準に、新たな機能軸を作りました。これらの技術は、お客様との会話からヒントを得ながら、日夜セキュリティカメラについて考えている技術者たちの、ユニークな着眼点から生まれたものです。

2006年には、社会のネットワーク化の動きに合わせて、ネットワークカメラとネットワークレコーダーを発売。ネットワークに映像を流すことがまだ一般的ではなかった時代でしたが、24時間365日稼働し続けるネットワーク監視システムの安定稼働を目指し、i-PROはすべてのシステム機器のネットワーク化を強力に推進してきました。全体の品質担保のために、入力部となるカメラだけでなく記録側までを一貫してご提供するスタイルも、i-PROとして実現してきました。

Q. これまでの総合的な開発力の上にi-PROの技術革新があり、業界をリードしてきたというわけですね。今年、社内組織構造の大きな変革によって、技術者の立ち位置も変わったとお聞きしました。

これまで、技術者は各々の部門に所属し開発を行っていたのですが、今年の春からは、事業本部が設定した開発プロジェクトごとに最適なメンバーが配置される仕組みへと変わりました。技術者は、それぞれのプロジェクトで最高の成果を出すことが求められます。

また、プロジェクトごとにチームメンバーも変化するため、非常に流動的な組織となりました。

i-PROはブランド・アイデンティティとして、「プロフェッショナルが行動できるように一瞬の真実を捉える」と掲げています。支える立場である技術者たちも当然プロフェッショナルであらねばなりません。世界基準の物差しですべてを実践し、世界トップ・レベルの開発力をi-PROのプロダクト部門すべてに提供することが求められるのです。この組織改編も技術者がプロフェッショナルとして挑戦し、成長することを目的としています。

定められた業務をこなしていくだけでは世界の技術革新のスピードについて行けない。電気回路が設計できる、ソフトウェアプログラムが組めるというだけでは、世界トップ・レベルの技術者には追い付けません。外向きにもアンテナを張り、世の中の動きを捉え、自律的に行動できることが求められます。こういった側面も含め、組織としてしっかりと技術者の成長を支えていきます。もちろん、私自身も技術者の成長を全面的にサポートします。

Q. 技術者の成長のために、どのような取り組みがあるのでしょうか?

技術者が自発的に学びたいと思っている分野ごとに仲間が集まり、互いに学びを実践していく「テックコミュニティ」という仕組みがあります。ただ商品を開発するのではなく、それぞれの知識を共有しあって、お互いを高めあう場です。この取り組みでは、内部だけではなく積極的に外部からの学びも取り入れていきます。「光学・画像技術コミュニティ」「メカトロ技術コミュニティ」など、現在は13のコミュニティが毎週活動しています。


センシング技術を生かすために必要不可欠な"進化"とは

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Q. これからの時代に必要とされる技術はどんなものだとお考えですか?

現在140億個あるとされるIoT機器の数は、2025年には500億個まで増えるといわれており、今後あらゆるモノがインターネットにつながるIoT化の流れが加速していくでしょう。世界では、より迅速なデータ処理を行うため、現在クラウド上で行われているAI処理をエッジ(端末)側で実行していくエッジ・コンピューティングの動きも急速に進んでいます。IoT機器の入力情報において映像は非常に重要な項目であるため、カメラのAI処理能力の向上や高度なセンシング技術へのニーズはさらに高まっていきます。こういった変化を、i-PROを大きく飛躍させていくチャンスだと捉え、今後もっと幅広い領域で信頼されるセンシング技術として磨き上げていければと考えています。

Q. そのために重要なこととはなんでしょうか?

AIに精度の高いデータを提供するためには、最適なレンズや光学設計、イメージセンサーなどの性能を最大限に引き出すデバイス活用技術、厳しい環境にも耐えうる筐体、信号処理のアルゴリズム設計などが必要です。AIのもつ力を十分に引き出すには、AIを支える技術も同時に進化しなければならないのです。たとえば、この先、AIが進化し続けると、AIが判断した結果を行動に移すことも求められるでしょう。そのために必要なのは、ミクロン単位で機械を制御し動かすメカトロニクスの技術です。

私たち、i-PROはメーカーの本分に立ち戻って、AIなどさまざまな最新テクノロジーに対応した、革新的かつ信頼性の高い映像機器の開発とプロフェッショナルなユーザーのニーズに応じたデータ提供や操作感の実現に取り組んでいきます。

Q. AIがセンシング技術に不可欠になるとしたら、i-PROの技術者にもAIの知識が必要になるのでしょうか?

技術者だからといってAIのアルゴリズムそのものを習得している必要はありません。しかしながら、AIに何が出来て、何が出来ないのかを知っておくためにも、AIの進化を常にキャッチ・アップしていかなくてはならないし、技術者としてトップのレベルを維持し続ける必要があります。それは、最終的にセンシング技術の可能性を広げ、より高度なお客様の課題を解決することにつながります。

Q. 最後に、長く監視カメラ開発に携わってきた高桑さんが描くi-PROの未来象についてお聞かせください。

人々の「安全・安心」に対する欲求はいつの時代も変わりません。その普遍的な欲求を、私たちi-PROの最先端かつ高品質な商品で満たしたい。i-PROの製品はすべて、我々技術者が実際にフィールドに出て、お客様の使用状況や運用体制を把握したうえで、ユーザーインターフェースなど総合的なユーザー体験を考え抜いて形になっています。技術や製品開発の裏にある、技術者の熱意や想いも皆様に知っていただけるよう、しっかり言語化し伝えていくことにも取り組んでいきたいと思っています。

あらゆる場所にi-PROのセンシングデバイスが存在して、プロフェッショナルな皆様が世の中の「安心・安全」を守るために活躍する。そんな世界を、i-PROの仲間たちと共につくっていきたいですね。

 

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インタビュー:佐藤 渉 / 長谷川 和芳

写真:前田 耕司

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高桑 誠(たかくわ まこと)

筑波大学基礎工学部卒業後、モノづくりを志して松下通信工業株式会社(現パナソニック)に新卒入社。技術者として監視カメラの開発に長く携わる。2008年、米国支社に赴任し、セキュリティ機器のシステムエンジニアとして営業サポートも担う。2011年の帰国以降は、監視カメラやテレビ会議システム、音響機器など幅広い製品の開発現場を技術総括の立場から牽引。2019年10月、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ 執行役員 商品センター所長に就任。2021年4月コーポレートテクノロジーヘッドに就任。世界最先端の技術に日々アンテナを張り巡らせながら、プロフェッショナルを支える商品を追求している。

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