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社会の安心安全に繋げる

国内トップメーカーのコアと新たなチャレンジ

2020年 11月 11日

執行役員 国内サーベイランス事業部長 朝比奈 純

パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社のセキュリティカメラシステムは、長きにわたって国内トップメーカーの地位を築いています。国内での事業を統括している国内サーベイランス事業部というチームで事業部長を務める朝比奈純は、かつてi-PROのIPネットワークカメラ事業の立ち上げにも大きな役割を果たした人物です。そんな彼に、国内におけるセキュリティカメラ事業の現在地と今後の展望について、語ってもらいました。


はじまりは、IPネットワークカメラの黎明期

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Q. セキュリティカメラ事業におけるこれまでの歩みを教えてください。

セキュリティ分野での、キャリアのスタートは2005年。パナソニックの国内販売会社で商品企画を担当する事になりました。ちょうどその当時、セキュリティ事業部で新しいIPカメラの開発計画がありました。その時代のセキュリティカメラは9割がアナログでしたが、これからはIPの時代だと感じて、国内のIPネットワークカメラ事業の本格的な立ち上げを上申しました。上司に代わって社長にプレゼンもさせて頂き、専任者を核とした全社プロジェクトを編成しました。「i-PRO」がスタートした年です。

旗ふり役の一人でしたが、これが売れない。不遇の日々でした(笑)。IPの競合のみならず、各社のアナログカメラシステムはラインナップ、機能、使い勝手、本当によく出来ていました。ただIPカメラにはフルデジタルならではの圧倒的な画質の良さがありました。そして、誰が犯人かハッキリ分かるようになる。さらに自由につながる。世の中はいつか必ずIPに変わっていくという信念だけはありました。

Q. IPネットワークカメラ事業が軌道に乗ったと、手応えを感じたのはいつですか?

2010年、事業統合がきっかけです。当時IPカメラは、i-PROシリーズとBBカメラシリーズの事業部門がグループ内で別々の会社にあり、私は2社の統合プロジェクトに関わっていました。双方の強みをかけ合わせる事で、遥かに安くて優れたモノづくりができることがわかりました。そして九州松下電器が母体のBBカメラの部門には、電話事業で培われた強いコスト力やものづくりのノウハウがありました。

IPをアナログ以下のコストと同等以上のラインナップ・機能で商品を世に出せる。そう確信しました。さらに画質と使い勝手に拘り、2010年に発売したのが、『i-PRO smart HD』。流通部門、販売パートナー様のお陰もあり、目標販売額を遥かに越える実績を残せました。


i-PROの3つの「強み」

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Q. 国内市場におけるi-PROがもつ「強み」は何でしょうか?

コアは3つあります。まず最初は、優れた撮像技術。私達には、他社にはない歴史と蓄積があります。1957年には、業界の先駆けとなる業務用監視カメラをつくりました。1997年には、世界で初めてワイドダイナミックレンジ機能を持った逆光補正カメラを実用化しています。エポックメイキングな技術革新の蓄積が、過酷な環境でもしっかりと「もの」を捉えるという撮像技術につながっています。

セキュリティカメラは、24時間365日、どのような状況下であっても結果を残さなければなりません。そのために、いくつもの技術的な壁を破る必要があります。たとえば、雨粒がカメラに付着すると鮮明な画像を残すことができないので、レンズに親水コーティングを施し、水滴をなじませ画質をクリアにする。人や車の動きを見てシャッタースピードを動的に最適化してブレのない画像を残す。他にも、寒冷地では、カメラのクリアドームに氷が付着するので、氷を溶かして画質を保つ。こういったユニークな技術革新を続ける力が我々のコアだと思います。

Q. 国内シェアNo.1の背景には絶え間ない技術革新があるんですね。残りの2つは?

2つ目は、機器の使い勝手、ユーザビリティです。長年に渡りお客様の声を元に、技術開発をし続けてきました。たとえば、カメラの取り付け方ひとつをとっても、作業を簡単する為の拘りが詰まっています。また、レコーダーやカメラなど、本来は複雑なシステム設定が簡単に出来る機能を用意しています。販売パートナー様やお客様から頂く声が、時には厳しいご意見もありますが、強い商品開発の原動力の一つだと考えています。

最後の一つは、品質。私達の製品は現場のプロフェッショナルが業務で使うものです。24時間365日運用を止めない為、またあらゆる環境に対応する確かな製品をお届けするため、一般的な規格以上の厳しい品質基準を多く適用しています。多くのお客様に製品への信頼と長期的なメリットを感じて頂いています。


これからのキーワードは映像の「活用」

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Q. 今後の国内マーケットはどのように推移すると考えていますか?

セキュリティカメラはセンシングデバイスに意味を拡げ、市場はこれから大きく成長していきます。
今後は、防犯のみならず、幅広い映像の「活用」がキーになります。映像からいろいろな情報が読み取れます。たとえば、店舗のカメラで、顧客の行動パターン解析して、店舗レイアウトを改善したり、プロモーションの効果を測定し経営判断に活かす等、様々な活用法が想定されます。また、労働力不足を支える様々なオートメーションにもカメラは役立っていくでしょう。
そうなると、カメラの機能も今後は求められるものが変わり、いかに有用なデータをセンシング出来るかが重要になっていくでしょう。

Q. 映像の「活用」という点で、どんなチャレンジをしていきますか?

今後は、活用価値の高い情報の取得が出来るかが求められます。私達のブランドのタグラインでもある「一瞬の真実」を捉える技術に磨きをかけていきます。さらに厳しい環境でも情報を捉える撮像技術や耐環境性能、そして、2次元の映像以外のデータセンシングにも挑戦していきます。これらのセンシングデータを活用する様々なサービスが立ち上がり始めています。その際、エッジ側でAI処理をして必要なデータのみをクラウドに送る事が求められます。そのエッジコンピューティングを担うAIカメラ、この分野でもトップランナーを走り続けたい。

ただ、映像の活用となると、それぞれの用途ごとに、お客様がやりたいことも異なってきますし、解析したいことも千差万別です。そんななかで、私達一社だけでは、ソリューション・パッケージを提供できなくなっています。

そこで力を入れているのが、AIやソフトウェアなど、様々な開発プロフェッショナルとのリレーションづくりです。一緒に価値を創っていく仲間を増やしたいですし、オープンに是非仲間にして頂きたいと思っています。そういうパートナー企業と連携することによって、相互のビジネスが加速し、顧客課題の解決がどんどん図られていく事を期待しています。
『i-PROカメラアプリケーション プラットフォーム』というAIカメラ用アプリケーションの開発パートナー向けのプログラムをスタートしています。ソフトウェア開発キット(SDK)を提供することにより、開発パートナーは、オープンな環境でアプリケーションを開発・販売できます。私達はWebなどを通じて、そのプロモーションを支援します。これも新たなチャレンジの一つです。

Q.最後に今後の抱負を聞かせてください。

おかげさまで当社は、セキュリティカメラシステムの分野で国内トップメーカーです。しかし、防犯という分野を見ても、まだゴールは遠い。技術革新によって、不幸な事件・事故を未然に防いだり、早い解決に貢献していきたい。もっと、安心安全な空間を世の中に広げていくため、チャレンジし続けます。

私が幼い頃は、小さな子供たちだけで遠くの公園へ繰り出して、冒険心を培っていました。今はどうかと言うと、親がついていないと危ないと言う声が多い。これは理想の社会なのか?日本であっても本当に安心安全かと言うと、決してそうではない。より住みやすい社会の実現のためにできることが、まだまだ、我々にはあると思っています。

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インタビュー:長谷川 和芳

写真:前田 耕司

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朝比奈 純(あさひな じゅん)

小樽商科大学卒業後、松下電器産業に入社。パナソニックシステムネットワークスなどを経て、2019年10月パナソニックi-PROセンシングソリューション設立とともに執行役員に就任。2020年4月より執行役員との兼務で国内サーベイランス事業部事業部長を務める。

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