kv-takahashi-hideaki-2

i-am i-PRO

Leading to a safer and more peaceful world

技術者の挑戦と成長を支える、人のつながりと学びの場

2021年 11月 11日

バイスプレジデント コーポレートソフトウェア ヘッド 高橋 秀明

「私の名前の字画は大大吉だそうです。いい仲間に恵まれて成長できる、大きな成功を得られるそうです。字画占いのとおり、i-PROは、まさに私の成長を支えてくれている大切な仲間とのつながりの場なんです。」そう言って笑う高橋秀明は、ソフトウェア開発やシステムエンジニアの経験を生かし、i-PROの黎明期にはお客様現場の最前線で活躍しました。現在は、R&D(Research & Development/研究開発部門)「コーポレートソフトウェア」のヘッドとして、ソフトウェア領域における技術人材育成、プロセス改革、要素技術創出を、グローバルで統括しています。i-PROのソフトウェア技術者が世界トップ・レベルへと躍進するために必要なものは何なのか、語ってもらいました。

 

大学研究室での「学び」とお客様先での「実践」が、技術者としての原点

takahashi-hideaki-img01-1

Q. 大学では、ファジー理論やソフトウェア設計開発、安全工学などを学んだそうですね。

ちょうど家電などにファジー理論が取り入れられて、機械が少し人間らしくなっていった時代でした。私もそれを勉強したいと思い、調べたところ、ソフトウエア・ファジー理論の第一人者に向殿先生という方がいると知って進学を決めました。

Q. どのような学生生活でしたか?

大学では、研究室にず〜っと入り浸っていて、向殿先生もそうですが、先輩方にも色々なことを教わりました。そこで学んだ、哲学、文化、情報科学の真義と真理を、この25年間、仕事で実践してきた感じですね。ソフトウェアの信頼性設計、人間にやさしいソフトウェアの真義をたたき込んでいただきました。いまでも困ったときには、先生やOB・同期に連絡させていただいています。学びとつながりはまさに財産ですね。妻と出会ったのもこの研究室ですし(笑)。

Q. 卒業後、パナソニックに入社してからは、どのようなお仕事をされたんですか?

ソフトウェア開発の即戦力として、映像監視システムの専用装置のソフトウェア開発部署に配属が決まっていました。でも、「ソフトウェア開発の最終目的は、お客様に貢献することなので、お客様を深く理解できるシステムエンジニアがやりたいです」と、生意気にも先輩に嘆願して配属部署を変更していただきました。お客様に、そして社会に貢献したい、お客様が困っていることを解決することに貢献したいという思いが強かったんです。この現場経験もかけがえのない財産です。

私が育った家庭は決して裕福ではなかったけど、両親はいつも「周りの人を大切にしなさい、人に貢献できる人間になりなさい」って言っていました。その影響もあって、金銭的な豊かさよりも人とのつながりによって、自分自身が豊かさを感じるところがあるんだと思います。家族は、僕の教育を優先してくれました。そのおかげでいまの自分があると思っています。だから、常に学んで、お世話になった恩師・友人・家族、そして社会に恩返ししたい。その想いが僕の原動力なのかもしれませんね。


世界で躍進するための3つの重要戦略

takahashi-hideaki-img02-1

Q. 2022年4月には、社名が「i-PRO」へ変更されます。今後はグローバルブランドとして、世界のマーケットで存在感を示さなくてはなりませんね。

そのために、世界基準の物差しですべてを実践できるプロの技術チームへと成長したい。そして世界トップ・レベルのソフトウェア開発力をi-PRO全社に提供していたいと思います。コーポレートR&Dは、2022年度末までの達成を目指して、3つの中期目標を掲げています。1つ目は世界トップの企業と渡り合えるプロフェッショナルな技術者チームとなること。次に、新製品の開発サイクルと製品品質が従来の2倍へ向上していること。最後に、i-PROの企業価値を高める要素技術が開発されていることです。

Q. 「世界基準の物差し」とはどういう意味でしょうか?

振り返ってみると、これまでは、自分たちのスキルと世界トップ・レベルとのギャップが不明確で、スキルアップに取り組む際も過去の経験則に頼っていました。つまり、世界のトップ・レベルの企業の実践=「物差し」を参照できていなかった。だからこそ、私たちにはまだまだ伸びしろがあるのと思うんです。

そこで、新生i-PROでは、まずリーダー・クラスの人材から、世界トップ・レベルの企業とのワークショップや協働を始めました。まずリーダーが世界レベルへ挑戦する、そしてリーダーが世界基準の学びを、i-PROの後輩へと広げていってほしいと思うんです。

Q. 2つ目の目標では「スピード」と「品質」の両立が謳われています。

i-PROはメーカーの本分に立ち返ると宣言しています。そして、世界でメーカーとして戦うためには、豊富な製品ラインナップを、最速のサイクルタイムでアップグレードしていくことが必要です。そこで開発プロセスの改革に挑戦しています。

これまでは、各商品のソフトウェア開発を個別に行ってきました。ニーズに応じて個別に商品を開発してきたわけですが、製品ランナップが増えれば増えるほど、重複作業や調整作業が発生して、ソフトウェア技術者の設計時間を奪ってきました。

この非効率なソフトウェア開発サイクルを、ソフトウェア・モジュラー設計という形で解決し、製品ラインナップの拡充、最速のサイクルタイムを目指します。

大きなソフトウェアの中から最小単位の機能をソフト・モジュールとして抽出します。そして、この小さくなったソフト・モジュールに合わせて、ソフトウェア開発組織も小さなチームに変えます。これによって、技術者が自律して常に素早く意思決定して開発できるようになります。最後にそれぞれのソフトモジュールに適したソフトウェア開発工法とツールを適用していきます。

品質面では、影響範囲はソフトウェアモジュール内にカプセル化され、安定します。生産性の面では、ソフトのモジュラー化で作業重複がなく、ソフトウェアのリリースのスピードが早くなります。なによりも重複や付帯作業がなくなり、技術者のイノベーションに対する設計時間を創出することができます。

Q. 要素技術の創出については、センシング技術の活用法が多様化するなかで、どのようなイメージをお持ちですか?

まさに、AI技術の進歩とともに、お客様のセンシング技術の活用は多様化・細分化していくと思います。システムエンジニアを長く経験して感じたことは、お客様の多様化するニーズを解決できる技術者は、最もお客様に近い、現場に近い方です。ですから、私やi-PROのソフトウェア技術者だけでは、世界のお客様を網羅するほど幅広く取り組むのは難しい、そこで、私たちのコア技術・コア商品である、エッジ・デバイス、つまり現場情報をキャプチャー・データ化・解析する分野を中心に先端技術創造し、お客様の近くにいる多くのソリューション・パートナー様に提供していきたいと思います。


プロジェクト制は技術者に「挑戦」を求める

takahashi-hideaki-img03

Q. 今年から技術者の働き方がプロジェクト制に変わりました。狙いを教えてください。

ソフトウェア技術者は、母屋として、私が担当している「コーポレートソフトウェア」に所属していますが、プロジェクトが立ち上がると、最適なメンバーがプロジェクトに配置され、そこでプロダクト企画メンバーと共にOne Teamで仕事をします。そして、プロジェクトが完了すると、また母屋に帰ってくる。これがi-PROのプロジェクト制です。

多様な技能を持つ技術者の挑戦の機会の平等性を担保することは、私の目標の一つです。プロジェクト制によって、挑戦や成長を切望する技術者が、さまざまなプロジェクトに参画でき、多様な知識や経験を得られることに加え、挑戦のために必要なのに接点がなかった人材との交流機会が生まれることが期待されます。

Q. 技術者のみなさんも、仕事の仕組みが変わって大変なのでは?

はい、大きな環境変化ですから大変だと思います。いままでは課長・部長が守ってくれることもあったと思います。しかし、新体制では自律したプロの技術者として活動しなくてはなりませんから、プレッシャーを感じることもあるでしょう。みんな、よく挑戦してくれていると思います。

私自身は技術者が目指す状態目標は「挑戦」だと考えています。そして、プロジェクト制は、技術者の挑戦を助ける一つの仕組みです。

一方で、失敗を恐れていては挑戦できないこと。また失敗を経験しなければ人は成長しないということに留意しなければなりません。つまり、プロジェクト制を生かして技術者の挑戦を支えるためには、失敗を恐れない職場であることも必要条件だと思うんです。

心理的な不安がなく、人とのつながりを感じられる職場をつくりたい。そして、挑戦のために、それに必要な情報が得られるつながりのある職場、大人の学びができるi-PROでありたい。わからないこと、知りたいことを、職場でさらけ出すことは、技術者には難しいと思うんです、評価につながらないか心配になりますよね。しかし、挑戦のために、それをさらけ出せる職場でありたい、その行動を賞賛し、成長のために学びを助ける職場でありたいのです。


「テックコミュニティ」は失敗を恐れない学びの場

takahashi-hideaki-img05-1

Q. そんな学びの場をどのように整えればいいのでしょう?

挑戦のために自らをさらけ出し、学びを深め、成功につながる失敗と成長を繰り返す" 大人の学びの場"として、今年7月に「テックコミュニティ」をスタートしました。現在は13のコミュニティがあって、技術者はどれか1つに所属しています。そこをホームにして、ほかにも自分が伸ばしたい技術があれば、そのコミュニティにも参加可能です。僕も子供のころ両親から勉強しろと言われても続きませんでしたから(笑)、技術のみんなが、自分で選択して行動してくれることを期待しています。

この場所では恥ずかしいとか、評価されるといった不安がない雰囲気をつくりたいと思っています。技術者同志のつながりをつくり、お互いがわからないことや挑戦したいことをさらけ出す。そして、挑戦に必要な情報を共有しあい、学習を助け合う。こういった場を目指しています。

この「テックコミュニティ」の状態目標は、世界トップ・レベルのソフトウェア企業との協働・学びからヒントを得ました。彼らは「挑戦するカルチャー」を企業の競争力の根底にもっています。多様なプロフェッショナルな人材が高い目標に挑戦する、その前提としてインクルージョン、つまりみんなが受容して包含される文化を醸成しようと取り組まれているのです。その学びは社内にとどまらず、ほかの企業とも連携していて、実際、私たちともつながっています。私たちi-PROの「テックコミュニティ」も、そんな社外のトップ企業の方々にも参加いただき、お互いにフィードバックし合い成長できる交流の場にしていきたいですね。

Q. 「テックコミュニティ」での学びの実例を教えていただけますか。

「守り」の学びと「攻め」の学びがあります。

「守り」の例として挙げたいのは、ソフトウェアの設計品質に向き合うという活動です。これまでの私たちの設計品質を振り返り、これからどう向き合っていくか、いままでの考え方に囚われずに、自分たち技術者で考えようと始めました。先ほどお話ししたように、自分たちの知見だけではなく、社外の有識者の方の考え方も学んでいます。先ほど紹介した、私の大学の恩師もシステムやソフトウェアの安全の第一人者です、こういった研究者・企業の方に相談し、さらなる設計品質の学びに挑戦しています。

「攻め」は、例えば、世界基準のソフトウェア開発に向き合う活動です。ここでも、世界のソフトウェア企業の先端的な理論と実践を、実際に社外から学ぶ活動をしています。座学だけではなく、具体的なプロジェクトを立ち上げ商品開発を通じて実践できるようになるまでが一つの学びだと思います。単にツールをまねるとか、やり方をまねるのではなくて、カルチャーまで取り入れてみようと挑戦しています。

具体的には、私たちの学びに共感いただいた、世界トップ・レベルのソフトウェア企業のみなさまと、学びと実践の場をつくり、i-PROのソフトウェア技術のリーダーがアクションを起こしています。そして、毎週のように、理論の実践に対して社外から世界の基準でフィードバックをいただいています。これによって、自分たちの実力がどの程度なのか、世界のどのくらいのレベルにあるのか、世界とはどのくらいのギャップがあるのかということを、技術者自らが体感することができます。そして、この経験が、さら成長をモチベートしていくと思うんです。

Q. 最後に、秀さんが描く目指すべきi-PROの技術者像を教えてください。

私が期待するi-PROの技術者の姿というのは、お客様やパートナー様から顔が見える技術者であることです。「あの技術者が開発した新製品が欲しい」と言っていただけるようなソフトウェア技術者集団を目指したいと思っています。これが実現した暁には、おそらく一律ではなくて、多様な芸術家のようなソフトウェア技術者の集団になっているんだろうなと思います。ソフトウェア技術者は「1ヶ月いくらだ」っていうような形で語られるんですが、そういった「人月」では語ることのできない、多様な芸術性をもった技術者集団でありたい。そのために、ルールやマニュアル通りではなく、世界基準で自律的に行動できるプロフェッショナルな技術者を目指し、仲間と共に成長していきたいと思います。

 

takahashi-hideaki-img04

インタビュー:長谷川 和芳

写真:前田 耕司

author-takahashi-hideaki-1

高橋 秀明(たかはし ひであき)

明治大学理工学部情報科学科を卒業後、松下通信工業に入社。SEとして約10年の経験を積んだ後、パナソニックシステムソリューションズ社などを経て、2019年10月パナソニックi-PROセンシングソリューションズ設立とともに執行役員に就任。2021年4月よりコーポレートソフトウェアのヘッドに就任。日本とアメリカの個性豊かな技術者を率いて、i-PROのソフトウェア開発をリードする。

このウィンドウを閉じる