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Leading to a safer and more peaceful world

エッジAIを武器に「世界をリードするi-PRO」へ

2021年 11月 30日

バイスプレジデント セキュリティ&セーフティーグローバル ヘッド 江口 将美

日本・アメリカを除くグローバル・マーケットにおいて、セキュリティ&セーフティ事業を統括しているのが江口将美です。現在はアメリカに居を構え、i-PROの世界戦略を練っています。ドイツ、シンガポール、アメリカと豊富な海外経験をもつ江口の目には、現在どんな景色が映っているのでしょう。そして、i-PROがグローバル市場で飛躍するための「鍵」はいったい何なのか。その心中を率直に語ってもらいました。


延べ17年に及ぶ海外駐在生活のスタートは?

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Q. アメリカでは、i-PROの拠点があるヒューストンにお住まいなんですね。どんな街ですか?

急成長している街で、全米で3番目、4番目の規模に拡大しています。元々「オイル&ガス」で成り立っていた街なので、グローバルな政治状況でアップダウンはあったにしても、基本的には裕福。所得税はゼロです。

Q. 週末はどのようにお過ごしですか?

健康のために週に1、2回は、歩いてゴルフをやれと医者に言われて、いまそれを実践しています。ヒューストンはゴルフがめちゃめちゃ安くて、週末でも20ドルでプレイできます。自宅からゴルフ場まではクルマで15分。毎週行くので妻には文句を言われますが、これは医療行為なので仕方ないです(笑)。

1人で予約するんですが、プレイするときには、そこに数人が加わることになります。あわせて3人になる場合もあるし、4人になる場合もある。みんな初対面なので「ナイス・トゥ・ミーチュー」の世界です。ゴルフ場には、白人は少ないけど、いることはいる。黒人はいるし、ヒスパニックもいる。台湾人、韓国人もいるし、ベトナム人もいます。本当にいろんな人がいるので、そこでのコミュニケーションが楽しくて。いまの生活のなかでは、この週末のゴルフがすごく刺激になっています。

Q. もともと海外勤務が希望だった?

海外を希望したことは、人生のなかで一度もありません(笑)。むしろ、転勤が多い仕事は嫌だなと思っていました。幼少期は父親の仕事の都合で3年に1回のペースで転校を繰り返していまして。毎回友達が変わるので、人との繋がりができなくて、「地元はどこ? おさななじみって誰?」という感覚でした。

そういうこともあって、将来家庭をもったときのことを考え、転勤が少ない、転勤があったとしても九州内に限られると思って、九州松下電器を就職先に選んだというわけです。

Q. 九州松下電器に入社してからは、どのようなお仕事をされたんですか?

大学と大学院では研究でソフトウェアを使ったし、大型計算機にもさわっていたので、自分はハードウェアよりソフトウェアに向いていると思っていました。入社すると、実際に電話交換機のソフトウェア部門に配属されて、ソフトウェアエンジニアとして志高くそこで頑張っていたわけです。

ちょうどそのときが電話交換機を海外で強化するタイミングで、入社1年後に海外の営業をサポートする担当に変わります。そのうちにSE機能が営業マーケティング機能に拡充していきました。ドイツの担当をしていたときにドイツの出向社員が帰国することになったのがきっかけで、妻と子供を連れてドイツに赴任。戻ってきたと思ったら、次は妻と子供を連れてアメリカへ行き、戻ってきたら異なる事業部へ配属された。このときに、電話系からいまのセキュリティ系に移りました。

その後、東南アジアを強化したいからシンガポールに行ってくれと言われて、また家族を連れて赴任しました。海外に赴任したときは、一旦日本に戻って1年か2年たってから、また海外に行くというパターンでしたが、シンガポールからは日本に戻らず横跳びでそのままアメリカに飛んで、いまに至ります。

海外勤務は合計で17年間。シンガポールからアメリカと、いまのところ8年連続で海外勤務です。思えば、私の子供は、国内だけではなく国境を股にかけて転校を繰り返したわけですね。「転勤しなくて済む仕事」という目論見は大きく外れましたけど、いい経験をしてきたので、それはそれでよかったと思っています。


多様な市場で通用するコンテンツを開発したい

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Q. ヨーロッパ、東南アジア、アメリカとさまざまなマーケットをご覧になっているわけですが、どのような違いがありますか?

まず、市場によってダイナミズムが違います。

たとえば、10月にオランダのアムステルダムに新会社を設立したヨーロッパは、マクロで見ると、先進国で構成された人口4億人強の巨大な市場です。先進国だけど、実は南と東はしっかり新興国の色合いを残しているし、国別に見るとそれぞれでやっぱり違うんですね。言葉はもちろん違うし、市場の規模も違う。非常にきめ細やかなケアが必要な市場なんです。汎ヨーロッパの案件が上がってくれば話は別ですが、国別の市場は規模が小さいので、上がってくる案件も小さくなる。

それに対してアメリカは、人口3億人で基本的に同一言語の国ですね。だから上がってくる案件もEUとは比べものにならないくらい大きい。

私はいま、セキュリティ&セーフティ グローバルということで、日本、アメリカ以外のヨーロッパ、アジアパシフィックといったエリアで販売を伸ばすことを主眼に置いています。しかし一方で、日本、アメリカも含めたグローバルでの販売機会を最大化するような新製品のコンテンツづくりにも全力で取り組んでいます。市場のダイナミズムを考えると、アメリカで通用する商品をつくることが、結果的にグローバルな変化に対応できる体質につながると考えるからです。

Q. ヨーロッパはプライバシーや環境などに関するコンプライアンスが非常に厳しいと聞きます。

ヨーロッパは、電子・電気機器の特定有害物質の使用を制限する「RoHS指令」といった環境規制にしても、人権関係のGDPRデータセキュリティにしても、世界に先行しています。これらは将来、似たような形でアジアパシフィックやアメリカにも適用されるんだろうなと見ています。ヨーロッパをスタートの場としてこれらをしっかり学ぶことは、グローバルで商売する上で非常に重要です。

Q. グローバルな視点から日本のマーケットを見たときに感じられることは?

日本のセキュリティのマーケットは、それ以外の国のマーケットと違って見えます。売れ筋のモデルや競合として上がってくるプレイヤーを見ても、海外とはちょっと違うんですね。日本で日本のマーケットだけを見た商品開発、展開をしていると、グローバルのマーケットでは厳しい。

中国のセキュリティ機器企業が東南アジアの中華圏に進出して、一気に市場の景色が変わったということがありました。日本でも同じようなことが起こらないとも限らない。そうなると、日本のマーケット環境もグローバルな基準に合わせることが求められます。やはりグローバルに対応できる商品づくりは重要だと思います。


世界戦略の要はエッジAIコンピューティング

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Q. i-PROがグローバルで飛躍するために、江口さんはどのような戦略を描いているのでしょう?

i-PROの市場占有率と販路のカバー率は、ほぼ同じくらいなんです。販路を拡大すればシェアも拡大するはず。ただ、販路を拡大するためには、それを可能にする何かが必要です。

ちょうどいま、エッジAIコンピューティングが注目を集めています。いろんなソフトウェア会社との付き合いがありますが、彼らから「i-PROのカメラに搭載されているAIの人物検知精度は抜群だ」という声が上がっているんです。最近発売されたi-PROのカメラには、すべてエッジAIコンピューティングが搭載されています。それをサポートするいろんなアプリケーションもあるし、VMS(Video Management Software)である「Video Insight」も持っている。販路拡大のためにもこれをアピールしない手はないと思っています。

Q. エッジAIコンピューティングの技術を生かして、新たにアプローチしようとしている業界は?

リモートで監視カメラを使った監視・警備サービスを提供している警備会社に大々的にアプローチしようかという動きになっています。我々のAIカメラは人をきちっと検知できる。だから誤報が少ない。誤報が多いのが、実はオペレーション上すごく大きな課題で、サービスの質とコスト競争力という観点で大きなダメージになっているんです。これを我々の技術で大きく改善できると思っています。

リモートガードサービスを行っている警備会社も労働集約型のビジネスになりがちですが、我々のAI技術を導入すれば、人の常駐警備に比べてコストはおよそ三分の一になるし、検知の精度も格段に向上します。結果的に、1人のオペレーターが20拠点(契約先)を監視していたのが、50、60拠点を見られるようになる。それによって、その会社の収益が拡大します。もしくは、サービス価格を下げることができて競争力が増す。

さらに、失報をなくして、セキュリティ脅威に対して適切なアクションを取っていけば、お客さんからの信頼度も高まっていく。これがきっと我々の技術を生かせる道です。

Q. 警備会社にアプローチするうえで課題はありますか?

大きい警備会社は、やはりきっちりと作り上げられたシステムがすでに入っていることが多い。その基幹システムと我々のカメラがスムーズに接続できるかどうかという問題があります。

それに、リモートガードサービスをもっている警備会社は、グローバル・プレイヤーが多いんですよね。彼らの1拠点を落とせば、全拠点を落とせるかもしれない。1拠点を落とさなければ、グローバルに広げるのは難しいとも言えます。それは、まだわかりません。すべてはこれからですね。ヨーロッパを突破口にしてチャレンジしたいと思っています。

 

世界の動きに敏感に反応することで先手を打つ

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Q. グローバルな舞台で仕事がしたいと考えている若いメンバーにアドバイスをいただけますか?

将来の展開を常に描きながら仕事をしていただきたいというのが若い方への想いですね。今日目の前にある仕事についても、そこで自分がどのような貢献をしていて、それが将来どのように役立っていくのかを意識して臨んでいただきたい。そして、自分の時間軸ではなくて、グローバル・ビジネスの展開スピードを見ながら仕事をすること。そうすればモチベーションも高まると思います。

Q. 最後に、今後i-PROが飛躍するうえで必要なものは何でしょうか?

i-PROは技術会社なので、世の中の役に立つ技術をずっと追い求めていくべきです。

加えて、需要の先取りをしていくべきでしょう。他社の動きに敏感になるのも大事ですが、それ以上に世の中の動きに敏感になって、先々必要とされる技術の開発に手を打たなければなりません。これまではそれがなかなかできなかった。そのわけは、我々に技術がなかったからではなく、見るべきものを見ていなかったからです。だから、とにかく市場の技術動向とか、政治による需要の変化などに敏感になって、常に先手を打っていきたいですね。

 

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インタビュー:長谷川 和芳

写真:藤森 泰士

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江口 将美(えぐち まさみ)

中学2年から高校卒業まで熊本市で過ごしたのちに、九州大学に進学。1993年九州松下電器に入社。パナソニック ドイツ、パナソニック システム ソリューションズ アジアパシフィック、ノースアメリカなどを経て、2019年パナソニックi-PROセンシングソリューションズ コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントに就任。同エグゼクティブバイスプレジデントを務めたのちに、2021年4月よりセキュリティ&セーフティグローバルヘッドとして辣腕を振るう。

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